本を寄付する

私と妻の共通点のひとつは本好きということだ。結婚したとき、互いが持ち込んだ本が千冊を超えていた。書棚もお互いのものを持ち込んだが、それではすぐに足りなくなり、最初に買った大型の家具がガラス扉のついた桜材の書棚だった。もちろん、妻が選んで決めたものだ。

その書棚は確かに丈夫で、40年近く経った今でもまったく歪みも緩みもない。しかし私の給料のひと月分でも足りなかった。妻は「ひ孫の代まで使えるのだから高くない」、そう言い切った(その自信はどこから来るの)。

その後、子供が生まれ、子供の本も私たちの本も増え続けた。このままでは家が傾く。何年かに一度、もう読み返さないだろうと思う本などを、まとめて古本屋に取りに来てもらって、書棚を増やさないようにしてきた。それでも大型の書棚が狭い家に六つ、廊下の壁面も書棚だった。

妻の残したもののうち、衣類や鞄、靴などは早々に義妹や従姉妹たちが引き取ってくれたが、本は手つかずのままだった。昨年の秋、母校の大学(妻の勤務先でもあった)で、本を寄贈することで大学基金へ寄付ができるプログラムが始まった。ネット経由でも申し込みができ、宅配業者が取りに来てくれる。2回に分けて2千冊ほどを寄付した。三つの書棚が空いた。

それでもまだ、かなりの数の本があり、私独りになったのにじわじわと増え続けている。CDやLP、DVDもかなりの枚数がある。近々、寄付を申し込もうか、いやまだ視聴するかもと決めかねている。妻だったらパッと決断するだろうに、そう思った。