同世代の人たちと話をしていて音楽の話題になった。その会話のなかで、私自身が驚くほど曲名を憶えていないことに気付いた。正確には、はやった洋楽について、原題は憶えていても邦題をまともに記憶していなかったのだ。だからか、話が微妙にかみ合わなかった。
高校生のときに、洋楽にやたらと詳しい同級生がいた。彼はビートルズ・フリークでもあった。その彼から言われたこと、「邦題なんか、日本人にしか通じんぞ。曲名は原題で覚えろ」。それを妙に覚えている。
至極まっとうな意見だと感じ入って、それからは、ともかく原題を憶えるようにした。といっても、今のように調べる手段が豊富にあるわけではない。レコード屋に行っては、レコードジャケットや裏の説明から原題を見つけてメモする、そんなことをしていた。
大学にすすんでからは、はやっている曲よりも気に入った歌手やバンドに興味がうつった。買うのはもっぱら輸入盤か「カットアウト」と言われる廉価盤だった。そのため邦題から原題を調べる必要はなくなった。学生時代にはステレオは買えなくて、友人のところに持ち込んではカセットテープに録音して聴いていた。今でもその頃のLPやカセットテープが相当数残っている。
友人たちとの会話で、邦題と原題がつながらず、わからなかったのは「悲しき天使」という邦題の曲。原題は “Those were the Days”, Mary Hopkin だった。それと、”Norwegian Wood”, The Beatles は決して邦題の「ノルウェーの森」などではない。敢えて訳せば「ノルウェイ産の材木」で、歌詞をみればその理由は一目瞭然なのだが、当時はほとんどの人が気にもしなかったのだろうな。