女子W杯、審判の技量の差

今回の女子ワールドカップの試合を見ていて、スピード、キック力、戦術やサッカースタイルの多様性など、すべてが4年前の同大会よりも格段に向上していることを感じる。世界ランキングでは下位の国々でも、南米やアフリカの国々のサッカーの質の向上は目覚ましい。現在のランキング上位の国々との差は確実に縮まっている。

その一方で、今回の大会を見ていて気になったのは、選手の力量の向上に比べて、審判のレベルアップが追いついていない様子が見えたことだ。審判の位置取りのまずさで選手と交錯したり進路を邪魔したりする場面、判定のムラ(プッシング、ホールディング)、悪質なファールへの対応、シミュレーションを見極める目など。

日本対イングランドでは、日本ゴール前での大儀見の反則によるPKの判定があった。その後の映像でみると、大儀見選手は手で押したり掴んでもいない、足も触れていない。イングランド選手のシミュレーション(反則を偽装する行為)だが、その時の審判の位置からは手前の選手の影できちんと見えていなかったと思う。

先にイングランドゴール前でPKの判定をしているので、その負い目というか、このまま日本がPKの一点を守って勝つようなことがあれば、もしシミュレーションと判定したら(当然イエローカードの対象になるので)、英国連邦の国でもあるニュージーランドの主審は厳しい非難を受ける可能性もある。そんな迷いが、大声を出して派手に倒れたイングランド選手に惑わされることにつながったのかも知れない。

WCのような国際試合の場合、判定や勝敗をめぐっては過去に何度も国家間の紛争や国内の騒乱にまで発展した歴史がある。だから、審判は出来るだけ利害関係の無い第三国から選出されるのが通例だ。今回の場合、南米もしくはアフリカ圏の審判が適切だと思うが、準決勝に見合う経験と技術をもった審判がいなかったのかも知れない。
ただ、FIFAでは、国際試合の審判もつねに評価される。上記の判定や位置取り、試合中の判定のムラなども判定され、研修会などをとおして技量の向上に活かされるはずだ。審判員の技術と経験もこうして蓄積される。