時代をみる、読む

2016/08号 『ダ・ヴィンチ』特集中村則文、伊坂幸太郎との対談を読む。買ってはいない、書店で表紙を見てパラパラと立ち読みをしただけだ。二人はずいぶんと気が合うようだ。ちょっと意外だった。

一月初めの朝日新聞に中村文則さんの投稿が載った。シリーズ「選べない国で」の『「お前は人権の臭いがする」 国と同化、自己肯定の差別 - 不惑を前に僕たちは 寄稿、作家・中村文則』。私が感じていたこの国のいまを的確に表している、そう感じた。その責任の一端は私にもある。抗いきれなかったからだ。

伊坂幸太郎さんの『首折り男のための協奏曲』は七編の短編からなる短編集だ。この中の一編『人間らしく』に戦争に関する記述がある。クワガタを飼う作家が戦争について語る。

「平和がいいね」と書くと、「ああいうひ弱なことを書くのはどうかと思う」「左翼的だな」との批判が殺到する。「そういう平和ボケの、腑抜けたことを言う人間は、国のことを考えていないんだ」とか。以下、クワガタを飼う「作家」の言を引用。

「戦争はいろんな意味で、国にとって最悪」「戦争ほど自国の経済が悪化するイベントはない。コストはかかるし、経済活動はまともに成り立たない。少子化なのに若者たちが死ぬ。」

「右翼だろうが左翼だろうが、愛国者で戦争反対はありじゃないか」

「もっと別の、被害が少なくて巧妙に勝つ方法を探すことを考える。その方がよっぽど国のためになる。(中略)直ぐに荒っぽいことを言う人間は信用できない。戦争に反対するなんて愛国心がないなんて言う人間も同じ。国のことを考えるなら、まずは被害の少ない戦略を選ぶ。」

「ローレンツが引用した『軍旗がひるがえると理性がラッパを吹き鳴らす』というウクライナの諺」に関して言う。

「熱狂こそが攻撃性を生み出す。一番、熱狂を生み出すために簡単なのは敵を作ること、このままじゃやられるという恐怖を煽ること。怒りは一過性だが、恐怖は継続する。恐怖に立ち向かうために熱狂が生まれる。実際の敵自体はなくてもいい。架空の敵を用意して旗を振れば理性がラッパを吹き鳴らす。そういう仕組みだ。」

ここで引用されている”ローレンツ”とは Konrad Lorenz で、動物行動学の研究者だ。著書は『攻撃―悪の自然誌』1985/4/30,  コンラート・ローレンツ (著), 日高 敏隆 (翻訳), 久保 和彦 (翻訳)、がある。その主張の核は「人間の攻撃性は本能的なもので後天的なものではない。」