西川美和さんの書くもの

『永い言い訳』2016, 西川美和監督 の映画が間もなく封切りだ。観ようか観まいか、迷っている。理由は、原作の小説も西川美和さん自身の作だからだ。そしてその小説をすでに読んでいる。しかもこの本は、昨年読んだもののなかでも...

辞書を較べる

テレビドラマの批評文に「そのあざとい雰囲気に警戒感を持ち」という表現があった。これを書いた人は「あざとい」をどういう意味で使ったのか、が気になった。最後まで読んで行くと、どうも「あざとい」を「態(わざ)とらしい」「いかに...

燃える空に鳳凰

年に何回か、燃えるような朝焼けに出会うことがある。10月5日は、まるで空一面が炎に包まれたような朝焼けだった。 朝焼けに気付いてのは6時10分前、数分すると比叡山の右側に、まるで首を伸ばした鳳凰が飛んでいるかのような雲が...

やはり京都は奥深い

平野神社の西側、住宅地を歩いていると、小さな和風の喫茶店があった。その日は車の十二ヶ月点検でまだ1時間くらいはかかる。コーヒーを飲みながら本を読もうと入ると、その店の奥はかなり手の込んだ日本庭園になっている。コーヒーを頼...

「あん」 映画と二人の人

見たかった映画「あん」( 監督・脚本:河瀨直美さん)のBlue-rayが届いた。見終わって、「あん」は音の映画だと感じた。音楽は最小限にして、風の音、外の音、人の話し声、生活音がつねに背後にある。その音の存在が、映画に奥...

午前五時のサイクリング

お盆を過ぎても、毎日、嫌になるほど暑い。最高気温が体温を超えるような日が続いている。昼間、もう午前8時以降は外に出たくない。それでも早朝はいくぶん過ごしやすい。湿度が低くて爽やかに感じる朝、いつもの散歩を自転車にかえて遠...

送り火の山にのぼる

今年も、送り火の朝、大文字山にあがった。「大」の字の要に着いたのは5時前だった。京都の町はまだ夜だ。湿気のある空気のなか、眼下の町は水の底に青く沈んでいるように見えた。 今年は、夜が明けきるまで、ここで京都の町を眺めてい...

夏の終わり

夕方、ヒグラシの「カナカナカナ」という声に気付いた。数日前までは朝日がのぼる頃にアブラゼミやミンミンゼミが一斉に鳴き出し、それが夕方まで響いていたのだが、うるさいくらいの蝉の声が消えて、カナカナの声だけが聞こえていた。夏...