Kathy’s Song / Eva Cassidy

地元FM局の番組で、長谷川きよしさんが京都暮らしのこと、好きな音楽のことを話していた。そのなかで好きな歌手の一人として Eva Cassidy をあげていた。

Live At Blues Alley, Eva Cassidy , 1996最初に買った彼女のアルバムは ”Live at Blues Alley”, 1996 だった。だがその年に彼女はメラノーマ(悪性黒色腫)で亡くなった。死後、スタジオ録音やライブ音源から何枚かのアルバムが制作されている。

2000年だったか、BBCラジオの”Sold On Song”に彼女の歌う”Over the Rainbow”がチャートに入り、話題になったことがあった。

私は、彼女の歌う”Kathy’s Song”が好きだ。彼女のそれは Paul Simon のそれとも、Simon & Garfunkel のそれ(Art Garfunkel が歌っている)とも違っている。”Kathy’s Song”は Paul Simon が作詞作曲した曲で、”The Paul Simon Songbook”, UK, 1965 が初出だと思う。

彼女の歌うこの曲には二種類ある。一つは”Time After Time”, 2000 の最初に収録されているもの、もう一つが”Simply Eva”, 2011 の7曲目のもの。”Time After Time”に収録されているもので彼女は1番、3番、6番の歌詞をギター一本の伴奏で歌っている。おそらくはデモテープ用のものではないかと思う。”Simply Eva”に収録されたもう一つは、ライブ会場での録音だと思うが、1番から6番までを歌っている。どちらも、Evaらしい歌い方だと思う。

ところで、Eva は Paul Simon の原曲と3カ所、歌詞を変えて歌っている。
一つは、2番の歌詞、”To England, where my heart lies”を”To a Land”と変えている。場所を特定しないどこかとして歌っている。
二つ目は、3番の歌詞、”My mind’s distracted and diffused”を”My mind’s distracted and confused”と歌っている。

三つ目は、4番の歌詞、”With words that tear and strain to rhyme”を”With words that tell and strain to rhyme”と歌っている(何度聞いても、そう聞こえる)。
”tear”は涙ではなく、引き裂く、むしり取るといった意味の動詞(テアに近い発音)だ。”strain to”は「~しようと懸命に努める,精いっぱい~する,無理して~する」という意味。”rhyme”は直接的には「韻を踏む」という語だが、作詞をする、詞をつくるという意味だろう。

Evaが亡くなったあとの友人や家族へのインタビュー記事で、彼女は、CDが売れて成功することよりも、小さなクラブで自分の歌を愛してくれる人たちの前で歌ってゆくことを望んでいたそうだ。2015年11月、”Nightbird”が発売になった。”Live at Blues Alley”, 1996 の全曲収録版で、曲間の話なども録音されている。没後二十年目のライブアルバム、彼女にふさわしい。