母子像の画家の絵をみる

京都国立近代美術館に「メアリー・カサット展」を見に行った。
Mary Cassatt(1844-1926)
彼女の絵は、作画の画期毎にタッチや色使い、題材などもがかなり変化している。いや、むしろ変化しない画家などいないのだと思う。

Mary_Cassatt_-_Kneeling_in_an_Armchair_-_Google_Art_Project筆使いの精緻さでは初期の作品。一世紀以上前のイタリアの宗教画のような感じがする。中期の油絵は遠目に見た柔らかな印象と違って、筆遣いはとても力強い。絵の具を強くキャンバスに押しつけたような、彼女の何かに抗う、怒りにも似た感情を感じるものもある。奥行きはさほど感じない。それらは実物を見ないと判らないことだ。

彼女は現在、母子像で知られる画家だ。今回の展覧会の宣伝文句もその点が強調されている。今回の展覧会で見た母子像は、確かに母(もしくは乳母か)と幼子を画いているのだが、母が子にそそぐ眼差しや愛情を感じる絵かというと、そうではないように思える。描かれる幼子の手足は力が入っている、ぐずっているような様子がみえるからだ。この題材で何を描いたのか、少なくとも母子間の愛情や暖かさではない、何か別のもの、そう思う。

「浜辺で遊ぶ子供たち」、幼い女の子二人が海岸で砂遊びをしている絵だ。画家が子供に注いでいる視線は、母子像よりも暖かい。その状景に ”Shell Seekers”, Rosamunde Pilcher の作中画が思いうかんだ。

そして晩年、シカゴ博物館女性観の壁画は、柔らかな線と穏やかな色で構成されている。彼女の作品では、ドライポイント(版画)がとくに心地よく感じた。構図や表現は浮世絵に似た印象がある。幼い子の肖像はわずかな線描と余白のみ、彩色もないのだが、柔らかな髪と頬を感じる作品だ。彼女は、油絵よりも線描の方が好きだったのかも知れない、そんなことを思った。