夏越の祓

先月末ぐらいから、散歩道のあちこちで「夏越の祓(なごしのはらい)」の張り紙を見るようになった。現代では6月30日が大祓だが、本来は旧暦(太陰暦)六月晦の行事だ。今年なら8月2日が旧暦の6月30日にあたる。

旧暦の頃の人々にとっては暑い盛りを過ぎた時期だ。京都では、祇園祭(明治以前は旧暦六月に行われていた)も終わり、「やれやれ今年の夏も越えることが出来たか」、人々はそんな感慨をもって夏越の祓を迎えたのではないかと思う。

水無月

水無月のなごしの祓する人は
ちとせの命のぶというふなり
(拾遺和歌集、「題しらず」「詠人知らず」)

奇妙な敬語に倦む

テレビはずいぶん前から見ないが、仕事中にながしていた地元FM局もここ二三年はめったに聞かなくなった。「キャスター」と称する話し手たちの奇妙な言葉遣いが気になって、「ん?」と思いことが多いからだ。つまりは仕事の邪魔になる。

「ご応募されてください」には驚いたが、「どうされてるんですか?」「言われたこと、よくわかります」「親しくさせていただいている」「~じゃないですかぁ」「聴かせていただいてます」。こんな言葉の語りが続くのは苦痛でしかない。だからといって、別に局に投書する気にもならない。おそらくは番組のディレクターたちも奇妙だとは思わないのだろう。

言葉は時代と共に変わる。「おっしゃる」「なさる」「お~になる」はもはや死語に近いのかも知れない。

上記の言葉についても、もはや正誤の問題ではないのだと思う。町内会の会議でも、司会をした四十代後半の男性は「司会の方、させていただきます。」と挨拶していたし、多くの人にとってはこの種の言葉がすでに「奇異に感じない敬語(尊敬、謙譲、丁寧)」なのだ。

いっそのこと京都弁でとおせば良いのに、と思う。「はる」をつければ敬語のほとんどはカバーできる。しかも「はる」は身内に使っても奇妙に感じない、実に許容範囲のゆたかな言葉なのだから。

御花畑絵図と小松帯刀

「近衛家別邸御花畑絵図」の発見とともに屋敷地の場所が特定された、という記事が京都新聞にあった(2016年06月10日号)。
薩長同盟締結の邸宅、場所を特定 京都の研究家、文書で裏付け : 京都新聞

以下、引用。

文書には「北(鞍馬口通)間口四拾八間六寸、西(室町通)奥行三拾三間三寸」と記され、総坪数(1796坪)や「瓦平家建」「瓦住居二階建」「土蔵」「瓦平家長屋」の記述も確認できた。鹿児島市で開催中の企画展「幕末薩摩外交」で初公開された「近衛家別邸御花畑絵図」にも森之木町の記述があり、水路の位置が別の古地図と重なることからも裏付けられた。

近衛家別邸御花畑はこのあたりか上記の記事から推測してみると、幕末の頃、室町通は寺ノ内で大きな寺院(無学寺)に当たり、屏沿いに約50メートルほど東に折れて、寺の屏沿いに北行する。西側はこの室町通、北側は鞍馬口通(現在と同位置)、東は擁翠園(日本庭園、後藤家屋敷跡)より西、南は相国寺の北端境(明治半ばの地図には細い路地がある)に囲まれた場所が、御花畑(近衛家別邸)で薩摩藩家老小松帯刀の宿舎と言うことになる。敷地は1796坪(6,000平方メートル)、鞍馬口側が約88メートル、室町通側が約60メートル。

地図は、現在のGoogle Mapに明治25年の地図をあわせたもの(このあたり、明治地図とGoogle Mapの重ね合わせの具合か、10mほどのズレがある)。
近代京都オーバーレイマップ

現在の烏丸通は、当時存在していない。京都御所西側に沿う道(旧烏丸)は、同志社大学を越えたあたりで相国寺につき当たり先はない。当時、京都中心部を南北に貫く主要道路は室町通だ。相国寺の屏に沿って80メートルほど西へ向えば室町通にあたる。

私は、この小松帯刀(当時まだ三十を超えたばかり)こそが、倒幕から明治維新を決定づける役割を果たした人物だと考えている。当時、薩摩藩主島津久光の名代として京都にいた小松が京都での朝廷や幕府、他藩との交渉や調整の全権を担っていたのだと思う。しかも小松は大藩の重役でありながら坂本龍馬などとも親しく、西郷や大久保、桂(木戸)に龍馬を引き合わせたのも小松だ。薩長の盟約を決断できる立場にあったのは小松帯刀しかいない。そして藩主島津久光を説得できる立場にあったのも小松のみだ。

小松は明治3年に数え36歳で亡くなる。足の痛みや胸の痛みなどにしばしば襲われていたようで、当時の藩重役の手紙には「御肺病」との記述があると、彼の伝記(『幻の宰相 小松帯刀伝』瀬野冨吉, 小松帯刀顕彰会, 1985年)にあった。西郷・大久保が戊辰戦争をしかけた時、小松は京都にいなかった。病が重くなり薩摩に戻っていた。もし小松が生きていたら、明治も日本も違った国になっていたのではないか、そんなことも夢想する。が、歴史に「if(イフ)」はない。

鞍馬口通はよくとおる道だ。ここで薩長同盟の話し合いが行われたのか、そんなことを考えながら自転車で走るのも、また愉しい。

夏の空に変わる

五月も下旬になると、日の出の位置は比叡山頂のずっと北の低い場所になる。その分、実際に太陽が顔を見せる時間も早くなってきた。4時を過ぎると少しずつ明るくなり始め、4時半にはかなり明るくなってくる。日の出前のその時間が一日のうちでもっとも心地よい。

夏の空
夏の空

写真は、宝ヶ池畔の西側から東の比叡山を望み、陽がのぼり始める頃に撮ったもの。まだ太陽は山の向こう側にある。ただ、空の色はこれほど青くはなく、実際は薄い水色といったところだろうか。これは、Googleが公開している画像プラグイン「Nik Collection」の「Color Efex Pro(色補正)」を使って空の色を少し強調してみたものだ。

「Nik Collection」については、以下のデザイン事務所のサイトに詳しい。
Googleの無料Photoshopプラグイン【Google Nik Collection】が凄い。

Kathy’s Song / Eva Cassidy

地元FM局の番組で、長谷川きよしさんが京都暮らしのこと、好きな音楽のことを話していた。そのなかで好きな歌手の一人として Eva Cassidy をあげていた。

Live At Blues Alley, Eva Cassidy , 1996最初に買った彼女のアルバムは ”Live at Blues Alley”, 1996 だった。だがその年に彼女はメラノーマ(悪性黒色腫)で亡くなった。死後、スタジオ録音やライブ音源から何枚かのアルバムが制作されている。

2000年だったか、BBCラジオの”Sold On Song”に彼女の歌う”Over the Rainbow”がチャートに入り、話題になったことがあった。

私は、彼女の歌う”Kathy’s Song”が好きだ。彼女のそれは Paul Simon のそれとも、Simon & Garfunkel のそれ(Art Garfunkel が歌っている)とも違っている。”Kathy’s Song”は Paul Simon が作詞作曲した曲で、”The Paul Simon Songbook”, UK, 1965 が初出だと思う。

彼女の歌うこの曲には二種類ある。一つは”Time After Time”, 2000 の最初に収録されているもの、もう一つが”Simply Eva”, 2011 の7曲目のもの。”Time After Time”に収録されているもので彼女は1番、3番、6番の歌詞をギター一本の伴奏で歌っている。おそらくはデモテープ用のものではないかと思う。”Simply Eva”に収録されたもう一つは、ライブ会場での録音だと思うが、1番から6番までを歌っている。どちらも、Evaらしい歌い方だと思う。

ところで、Eva は Paul Simon の原曲と3カ所、歌詞を変えて歌っている。
一つは、2番の歌詞、”To England, where my heart lies”を”To a Land”と変えている。場所を特定しないどこかとして歌っている。
二つ目は、3番の歌詞、”My mind’s distracted and diffused”を”My mind’s distracted and confused”と歌っている。

三つ目は、4番の歌詞、”With words that tear and strain to rhyme”を”With words that tell and strain to rhyme”と歌っている(何度聞いても、そう聞こえる)。
”tear”は涙ではなく、引き裂く、むしり取るといった意味の動詞(テアに近い発音)だ。”strain to”は「~しようと懸命に努める,精いっぱい~する,無理して~する」という意味。”rhyme”は直接的には「韻を踏む」という語だが、作詞をする、詞をつくるという意味だろう。

Evaが亡くなったあとの友人や家族へのインタビュー記事で、彼女は、CDが売れて成功することよりも、小さなクラブで自分の歌を愛してくれる人たちの前で歌ってゆくことを望んでいたそうだ。2015年11月、”Nightbird”が発売になった。”Live at Blues Alley”, 1996 の全曲収録版で、曲間の話なども録音されている。没後二十年目のライブアルバム、彼女にふさわしい。

映画ははじめの5分

映画ははじめの5分で決まる、私はそう思っている。実際、記憶に残る映画は始めの五分で見る人を物語に引き込む。

例えば、以前にも紹介した”A League of Their Own”のはじまりも見事だと思う。(ただ邦題は「プリティー・リーグ」、これはあまりにひどい)。

まず最初の3分で、主人公の一人、Dottie(Geena Davis as Dottie ”Queen of Diamond”)の今と人生を観客が判るよう的確に描いている。まず家の外観をみせ、大きさや庭の様子、部屋のショット、チェストの上の写真、部屋の様子から夫婦の寝室でないこと、手の指輪(結婚指輪ではない)で夫はすでに亡くなっていること、それなりに満ち足りた結婚生活だったこと、子供は二人、夫の死後に娘と同居、関係は良好、かつて野球をしていた、元キャッチャー、野球を離れた暮らしをしてきたこと、孫は二人で男の子、孫に慕われていること、何らか理由(妹の夫が原因か)で妹と疎遠になっていること、アクセサリーはシンプルなものが好み、理知的だがけっこう体育会系であること、そしてこの旅に出ることを迷っている。旅支度の様子を見せながら、これだけのことを判らせる。さすがに女性の監督だなと思う。

娘の車で空港へ向かう、家を出るショットの3分30秒から”Now and Forever”が始まる。長距離バスのショットがいくつか、風景の変化で長旅であることを示し、”Cooperstown N.Y.” の歓迎ボードで、目的地が野球の聖地、野球殿堂(”The National Baseball Hall of Fame”)であることがわかる。参考までに、AAGPBL (All-American Girls Professional Baseball League)

バスを降りた彼女が隣接の球場にはいると、そこでは楽しげに野球を楽しむ、かつてのリーグの面々がいる。”I miss the day we met and all that followed after” で歌が途切れ、1943年に場面は変わる。ここまでで5分半。お見事!

黒澤明監督の『用心棒』や『赤ひげ』、”The Spitfire Grill”(邦題:この森で、天使はバスを降りた。原題をカタカナにした方がまだマシだ)、ヒッチコックの作品の数々。挙げだしたらキリがない。

ともかくも、映画は最初の5分だ。

ツツジのおわり

5月6日の朝、空一面の雲、しかも雲が早く動いている。10時過ぎに雨になった。宝ヶ池畔のツツジは盛りを過ぎつつあるようだ。

宝ヶ池畔のツツジ
2016年5月6日の早朝、宝ヶ池畔のツツジ

5月7日、雨上がりの朝。国際会館の植え込みのツツジ。昨夜の雨粒が残る。

雨の残るツツジ
雨の残るツツジ

柑子色の空

午前5時畔過ぎの空は柑子色(こうじいろ)に見えた。日の出の位置は比叡山頂のずいぶんと北側にうつってきた。稜線に陽がかかるその瞬間、空の色が変わる。モミジの新緑も鮮やかになってきた。

柑子色の空

柑子色とは、少し赤みがかった明るい黄色で、古くからある伝統色だ。『色の名前』2000年4月, 角川書店刊にあった。

これから夜明けの時間はますます早くなり、昼時間は長くなる。

晩春のなごり

4月も下旬になると5時には明るくなってくる。京都の日出は5:17、日没は18:34、夕方が長くなった。
桜もあらかた散った。比叡山の山腹には桜の色がなくなり、新緑が目立ってきた。

今朝、散歩の途中でいつもと違う道をとおってみた。未だ満開の八重桜の木が一本、その少し先の角を曲がると今度は赤紫や白の芝桜がさく小庭があった。
晩春のなごりと初夏の萌しを感じた。

満開の八重桜
満開の八重桜
初夏を感じる芝桜
初夏を感じる芝桜

雨の桜

今朝は雨、風もやや強い。満開の桜には厳しい試練だ。4月4日の朝も雨、いつもの散歩の時間には小雨程度だった。高野川沿いの桜は二分咲き、雨にぬれる花びらに水滴がひかっていた。せめて満開までを全うさせよ、そう願う。

雨にぬれる桜

雨にぬれる桜

iOS端末のストレージにマイクロSDカードを使う

クラウドファンド(Cloud Funding)のサイトで見つけた。

Dash-i MicroSD Reader: smallest external storage for iOS by Andy & Rich — Kickstarter
URL:https://www.kickstarter.com/projects/andyfei/dash-i-microsd-reader-smallest-external-storage-fo

以下は、この器機を紹介する日本語のウェブページ。
iOS端末のストレージを無制限に拡張!マイクロSDカードを使えるようにするリーダー「Dash-i」 | Techable(テッカブル)

おぉ、これは良い、と一瞬思ったのだが、私の場合、iMacで聴いている音楽や写真などを iPod Touch で一時的に持ち出す、という使い方がほとんどだ。ならば、iPod Touch に何でもかんでも持ち込まないで編集すれば、現状の32Gbでも事足りるな、そう思い直した。

iPhone あるいは iPad のみの人には役立つのかも知れない。