西川美和さんの書くもの

『永い言い訳』2016, 西川美和監督 の映画が間もなく封切りだ。観ようか観まいか、迷っている。理由は、原作の小説も西川美和さん自身の作だからだ。そしてその小説をすでに読んでいる。しかもこの本は、昨年読んだもののなかでも優れて印象深い本だった。だから迷う。

以前、西川美和さんの『その日東京駅五時二十五分発』について、つながる記憶をここに書いた。彼女の書く小説は、視点と連想(想像)がとても独特だと思う。私には思いもつかない、その提示が刺激的なのだと思う。

この本『永い言い訳』を書くきっかけは東北北陸をおそった大地震と津波だったのだそうだ。インタビュー記事を読んだ。

「人間同士の関係性は綺麗な形ばかりではなく、後味の悪い別れ方をしたまま相手が帰らぬ人になってしまったという不幸も、あの突然の災厄の下には少なからず存在したのではないかと。そしてそういう「暗い別れ」は誰にも明かされず、打ちあけられないままに埋もれていったのではないか。」
そんな不本意な別れ方をしたら、関係を修復することも、話し合って精算することもかなわない。残った者は「これから生きていく限り言い訳を繰り返していく、ずっと繰り返さざるを得ない」

確かにそうだ。「あの時こうしていれば、していたら」と思える人はまだ良い。それが及ばない、成り立たない状況での別れならば、他者に語ることが出来ない「言い訳」を秘して生きてゆかねばならない。

映画はやはり観ないでおこう。