遺伝子の不思議

8月4日に二人目の孫が生まれた。七ヶ月あたりから流産の恐れがあって彼女の母は入院することになった。それからひと月、これ以上お腹の中にとどまることが難しくなった。二千五百グラムに満たない彼女はこの世に生まれてきた。これから...

静かに誰にも知られずに退く

今日、死を知らせる葉書を受け取った。以前勤務していた職場の上司のものだ。「故人の意思によって家族のみで弔い、すべてを終えた後に知らせた」旨の詫びが記してあった。命日は5月26日、享年75歳。 30年ほど前のことだが、その...

白馬村から八方尾根に

井上荒野『キャベツ炒めに捧ぐ』に、「ふきのとう」をめぐって、亡くなった夫と訪ねた信州に再び足を向ける話がある。目指すところは高速道路のインターを降りて、そこから一般道を一時間ほど、途中で「二つ連なって現れる湖」と、その道...

風薫るのは皐月なのか

「風薫る」ときけば、ほとんど反射的に「五月」を思い浮かべるのだが、いつ頃からそうなったのだろうか。 風かをる軒のたちばな年ふりて しのぶの露を袖にかけつる は、鎌倉時代初期(1204年)の「秋篠月清集(藤原良経の私家集)...

解消しない疑問

「小説」の読み方は人それぞれだろう。たんに面白い話、よく出来た物語として読む人もあれば、作中の人物にだれかを投影する、共感して読むという人もあるだろう。私は、どちらかと言えば客観的に読む方だと思う。 作者はどういう意図で...

邦題は知らない

同世代の人たちと話をしていて音楽の話題になった。その会話のなかで、私自身が驚くほど曲名を憶えていないことに気付いた。正確には、はやった洋楽について、原題は憶えていても邦題をまともに記憶していなかったのだ。だからか、話が微...